食べたいと思いつつ、お店ではひとりでなかなか注文できないんです。
なぜかって?
一人では食べきれないんです。
ひとつ頼むと大体3〜4人前の量がきます。
数人で囲んで食べるお蕎麦で、『へぎそば』と言います。
『へぎ』というのは、この地方独特の言葉で、板を薄く剥いだものを言います。檜のへぎで折敷を作り、大体横45cm縦30cmくらいの角盆の中に、一口サイズに分けたお蕎麦を30個ほど並べたおそばです。
盛り付け方だけではなく、そばの打ち方も独特です。
つなぎには布海苔(ふのり)を使い、この地の水とあいまってとてもコシの強い、そしてさわやかなのどごしのそばです。

一度お土産に買っておいたへぎそばを、日差しのキツイ夏の日の公園バーベキューに持ち込みました。
いつもどおりみんなでビールと肉・肉・ニクと、シコタマ脂をおなかに仕込んだあと、デカイ鍋で一気に20人前ぐらいゆではじめました。
集まったみんなは、「えっ!? まだ食べるの?」「私はもういいよ!」と怪訝な、そして迷惑そうなまなざしを私に向けてきました。
「まあ、そう言わずに一口でいいから口に入れてみて!お願い!」
とお願いしながら、でっかいザルに氷をかけて出しました。
すると、
「えっ?なにこれっ!うまい!」
「スッと入る!!?」
「なにか海に来たカンジ!」
結局、12人でキッチリ食べてしまって、「追加は?」と聞いてくるものまでいました。
バーベキューメニューで久々のヒットを飛ばした快感とともに、私の脳裏には、むかし小学生のころ、山いなかの河原で食べたおばあちゃんのこねた蕎麦と、照りつける日差しとさわやかな風を思い出し、一人泣きそうになっていました。



























